サッカー上達の秘訣(抄) エリック・バッティー(1976年ベースボールマガジン社発行)
いかにしてスター選手を発見するか 可能性の発見 将来必ずのびる素質をもった若い選手を、どのようにして発見するかということは、サッカーの中でたいせつに守られている秘密の1つである。この秘密に通じている人々のうちで、のちに彼らは選手たちに何をみ、どこにひかれたかということをしゃべる人はいない。 考えてみれば、すべての人々にその選手に何をみ、どこに目をつけたかというスター発見の手引きを授ける必要などないわけである。 これが、多くのコーチや監督やスカウトが彼らの知識をかくす理由である。<略>ある若い選手を観察し、報告するとすれば、彼の可能性をも評価したうえで<略>理想的な選手に必要なすべての素質と才能を合わせもち、スピード、勇気、スタミナ、決断力、頭のよさ、想像力、その他多くのものをもったボール扱いに巧みな少年でなければならない。 サッカーにおける理想的選手とは <略>他の要素も重要であるが、ボール扱いと頭のよさというものは、2つがともにサッカーの基盤をなしているのであるから、絶対的にたいせつなものである。 将来、完璧な選手になる者は、この2つの性質をよく表しているものであるが、もとより10歳や11歳の少年にペレのような満場を圧するようなすばらしいプレーや、5人もの対戦相手を抜いてあざやかな得点を入れるドリブルを期待しようなどと考えてはならないし、すばらしいタイミングのスルーパスで、完全に守備陣を破るところを見ようなどと期待してはならない。10歳や11歳の若い選手に見いだすものは、ボールを扱うときの絶対的な自信や能力といった優秀性に関する”ヒント”とボールを持っているときのパスの出し方とボールを持っていないときのポジションのとりかたに表される単純で基本的な頭のよさである。 <略>ディ・ステファノ、マシューズ、ペレ、スアレス、マニオンらはボールを持って動くときに、楽々とやっているように見える。すぐれた若い選手も、10歳や11歳であっても、そのように見えるものである。 ゲームにみられる頭のよさ サッカーにおける基本的な頭の良さといわれるものを見出すのはまったくやさしいことである。選手がボールを持ったとき、何をしようとするか、またボールをもらう前にどんなポジションをとろうとするかによって、簡単に見つけることができる。守備者の場合には相手の意図をじょうずによんで、先手をうつのが頭のよさの表れであり、攻撃者の場合には、彼が守備の手薄なスペースに、うまくそっと走りこむところにみられる。 <略>もっとも大切なことは、感心のある選手だけを試合の中で見て、彼がボールを楽しそうに扱っているかを注視しなければならない。そして彼の潜在能力は@ボールを難なく扱っているか、A扱いにくくバウンドするボールのワンタッチコントロール、B胸や太ももでのワンタッチコントロールできるか、C彼はボールを自分のものにしてうまくうごいているか、Dボールを用意に、自然に運んでいるか、E相手チームは彼にタックルするのをむずかしいと感じているか、自然のフェイントや体の移動が巧みか、Fパスのタイミング(出す場所、時機、スピード)を正しく判断しているか、たとえば相手にマークされている味方の選手にパスを出すとき、相手のタックルからボールを”スクリーン”できるところに送っているかという技術に見出される。<略> 多くの才能を持った若い選手の発達過程にある本当のスターにおいては、頭のよさというものが才能と同じようにはっきりとみられるものである。 一般的頭のよさとサッカーでの頭のよさ −この章では学校の成績とサッカーの頭のよさとは別物であると書いている。− サッカーでの頭のよさということは、目でみることもできるし、耳で聞き取ることもできるが、第1にほとんどのゲームにはっきりとみられる選手のポジション・センス(ポジションのとり方の感覚)と特に関係している。ボールのないときに、彼はよい位置に動いているか? 彼は動き出す前にパスが来るまで待っているだろうか? 次に、ボールを持った彼をよく注意し、そのパスの出し方に注目してみよう。正確性というものはここでは比較的重要ではない。注意すべき要点は、彼の動きがよい意図のもとでなされていたか、みすごしたり、無視したりしているテャンスがあったのではないかという点である。 声をかけ合おう 頭のよさは耳で聞き取ることができる。すべてのすぐれた選手達は全試合中、仲間の選手に自由自在に声をかけている。ボールをもっているときでも、いつもあたりを見回し、仲間に声をかけている選手は絶えず考えている選手である。ゲームが進行している間に選手が声をかけているのを聞いてみなさい。そして判断しなさい。彼は正しいアドバイスをしているだろうか? つまらないことをいっているのではないだろうか?<略> 年齢にかなった身体的素質 たいへん若い選手では、スピード、力、スタミナといった身体的素質を見つけるのは、なかなか困難であり、つねに年齢を考慮してやらなければならない。たとえば、スルー・パスを出そうとする場合を例にとってみよう。パスが正確で正しいタイミングで出された場合でも、その選手が必要な20ヤードの距離をけるだけの力がなかったがために、失敗してしまうことがあるかもしれない。だから、もしその動きはいいものであったが、距離が足りないがために失敗したとしても、10歳の弱々しい少年としては満点で合格とされよう。 多くの選手たちが14歳のときにあまりに小さく余りに弱々しいという理由でクラブにはいるのを拒絶されたり、見逃されたりしたことがあった。しかし、20歳で第一線に出てくることはよくあることである。骨格も大きくなり、われわれのチームの競争相手の主役となって現れる。つまり、われわれは彼の年齢のことを、じゅうぶん考慮してやらなかったために、自分のクラブにとりそこなったわけである。 同じような考えは、スピード、スタミナにもあてはまる。<略> 心理的素質 −この章は恐怖心に言及している。筆者は技術の上達とともに、若い選手のなかにある恐怖心を克服しなければならないという。しかし、外見的には一流選手になって、やがて技術の上達も止まった時、恐怖心が克服されているか否かによって次の段階に進めるかも決まる。しかし、選手の気質の中で恐怖心を見つけ出すことがもっとも困難であるともいう。 熱意をもった選手の発見 −最後に今まで語られた素質を持った若い選手がより上達するために指導者はゲームに対する選手の態度を見極めなければならないと結ぶ− 彼が単に楽しみのために試合をするのか、大きいクラブに入り、彼の技術を真に上達させようと心から願っているのかをはっきり知るために、選手と話し合わなければならない。 というのは、多くの少年たちは本質的には内気であるが、一方では外観的に自信にあふれた者もいるからである。<略>この選手は良い選手になることに本当に熱心であるのか? 時間をいとわず練習するか? ゲームに重要な多くのことや必要なことならどんな小さなことでも熱心に学ぼうとしているか? われわれの最初の評価が正しかったか、誤りであったかが本当にわかるのは、あとになってからである。 若い有能な選手を発見するという段階を超え、上達させるという段階までのべてきたが、選手とコーチとの間に完全な理解、相互信頼というものがなければ、きわめて有能な選手といえども、うまく上達しないということを、最後に強調しておきたい。 |
TOPページ 2002.1.21更新